めまい

“めまい“と一言でいっても、さまざまな病気があります。 脳梗塞や脳出血などの脳の病気で起こる”めまい“もありますし、高血圧や低血圧など血圧の変動、不整脈など心臓や血管の病気で”めまい“を自覚することもあります。 他には、肩こりがひどい方、足腰が弱い方、女性ホルモンのバランスの崩れ、貧血、疲労、精神的な病気、自律神経の乱れ、加齢による平衡機能の低下など、さまざまな原因があります。
耳鼻科で扱う“めまい”は、おもに三半規管(前庭)に異常があり、ぐるぐる目が回る、めまいです。
体は、耳の奥にある三半規管のほか、目、体幹で感じた情報を小脳で統合されバランスをとっています。 耳の障害、三半規管(前庭)に障害があると天井がぐるぐる回る、あるいは景色が左右に流れていくようなめまいを自覚します。

  • めまいの検査、診断

    ①問診
    めまいの原因は多種多様ありますが、実は診断に最も大切なのは問診です。
    めまいとめまい以外の症状がどのようなものがあるのかを確認することが必要です。
    通常めまい症状に加えて吐き気、嘔気などは、多くのめまいで見られます。それ以外にどのような症状があるかで、原因が絞られてきます。
    めまいの性状が、ぐるぐる回る(回転性)、ふわふわする(浮動性)目の前が真っ暗になる、などの性状が、めまいの原因によって変わってきます。
    また、めまいの持続時間や、誘因となるきっかけ(立ち上がったとき、寝返りをうったとき、起き上がったときなど)、 随伴する症状(難聴、吐き気、頭痛、動悸、手足のしびれ、しゃべりにくい、物が二重に見える)の有無、その他(疲労、肩こり、生理不順の有無など)患者さんの生活背景などを確認して病気の原因を絞っていきます。
    ②聴力検査
    聴力検査で聴神経や内耳の働きを確認します。聴神経の働きをみます。耳鼻科で扱うメニエール病や突発性難聴では、異常が見られます。
    ③頭位変換眼振検査
    赤外線カメラで目を拡大して観察し、頭や首の位置を変えてめまいの誘発をみます。
    メニエール病、前庭神経炎、突発性難聴、良性発作性頭位めまい症などでは、眼振と呼ばれる目の動きが観察されます。
    ④重心動揺検査
    耳、目、小脳、体幹の知覚をみます。また重心動揺の程度が治療によってどの程度回復してきているかの比較ができます。
    ⑤その他
    ・脳神経検査
    目の動き、顔の動き、手足のしびれ、舌の動きなどを観察し、脳神経の異常の有無をチェックします。また指鼻試験、など小脳や脳幹の異常をチェックします。
    シェロングテスト
    立位、座位での血圧の変動、立ちくらみ、の有無を確認して、血圧の異常や自律神経の調整機能をみます。
    ・血液検査
    貧血の有無、肝腎機能、血液の電解質のバランス、糖尿病、ホルモン、自己免疫疾患の有無などをチェックします。
    ・MRIなどの画像検査
    中枢性(大脳や小脳)または聴神経の腫瘍など頭の病変を疑う場合には画像の検査を行います。

  • めまいを起こす様々な病気

    メニエール病

    ・メニエール病
    内耳はリンパ液という液体で満たされています。そのリンパ液が過剰になる(内リンパ水腫)ことで、めまいや、吐き気、耳鳴り、難聴が起こる病気です。 特に低い音の聞こえが悪くなり、ぐるぐる回る回転性のめまいが、数十分から数時間起こるのが特徴です。めまいを起こすごとに徐々に難聴が進行することもあります。

    ・遅発性内リンパ水腫
    以前より難聴の既往があり、何年も遅れて回転性めまいを起こすことがあり、遅発性内リンパ水腫と呼ばれます。病態はメニエール病と似ています。

    ・良性発作性頭位眩暈症(BPPV)
    三半規管には耳石という石があり、その石が本来あるべき部位から剥がれ落ちて、三半規管の中を移動することで、つよい回転性のめまいを誘発します。 頭を傾けたり、寝返りや寝たり起きたり、といった頭の位置を動かすことで、めまいが誘発され、数十秒続き、治まってきますが、頭を動かすと、また同じようなめまいをくり返します。
    女性に多く、まためまいの中でも最も頻度が多い疾患です。

    ・突発性難聴
    突然なんの前触れもなく聞こえが悪くなる病気ですが、障害が強い場合にはめまいを合併することがあります。

    ・前庭神経炎
    ヘルペスウイルスがバランスをつかさどる前庭神経の中で活性化して神経障害が起こると考えられています。 めまいは数日間続くこともあり、吐き気を伴います。めまい症状が強く日常生活に支障がでて、吐き気のため食欲も落ちることがあります。 難聴や耳鳴りは伴いません。めまいが治ったあとも、ふわふわする感じが長引くことがあります。

    ・聴神経腫瘍
    非常にまれですが、内耳の神経に良性腫瘍ができることがあります。初発症状が耳鳴りであることが多く、経過とともに腫瘍が大きくなると難聴やめまい、顔面神経麻痺を来たすことが典型的です。 良性腫瘍であり急速に大きくなることはほとんどありませんが、MRIなどの検査を行わないと診断ができません。

    ・外リンパ瘻
    鼻を強くかむ、外傷、ダイビングなど内耳の圧力の急激な変化により、リンパ液が中耳に漏れることで、回転性めまい、難聴、耳鳴りを起こします。 耳鳴りは小川のせせらぎのような水が流れるような音が聞えると言われています。この病気も問診が非常に大切で、鼻を強くかんだあとに耳が変になってめまいが起こった、などの典型的なパターンが多いです。 早期に治療を開始しないと難聴の後遺症が残る可能性があり、確定診断および治療のため手術が必要となることがあります。

    ・ラムゼイハント症候群
    帯状疱疹ウイルスの感染により、耳介や外耳道の炎症による耳の強い痛み、難聴、めまい、顔面神経麻痺を起こします。 すべての症状が出ない場合、不全型ハント症候群と呼ばれます。
    いずれも耳の激痛に始まり、徐々に耳の周囲の発赤腫脹が強くなります。難聴、めまい、顔面神経麻痺は症状が出始めてから、3日以内に起こることが多いとされています。 この病気を疑った場合には、痛み以外の症状が乏しくても治療を開始することがあります。

    ・急性中耳炎の内耳炎
    急性中耳炎の経過中に中耳の炎症が内耳に及んで、難聴や耳鳴り、めまいを起こすことがあります。 特に難聴に関しては早期の治療が必要で、鼓膜切開やチュービングを行い、抗生剤とともにステロイドの投与が必要になることがあります。

    耳鼻科領域以外のめまいの病気
    脳梗塞、脳出血、小脳腫瘍などの脳の病気は緊急を要する疾患です。
    その他、椎骨脳底動脈循環不全、一過性脳虚血発作(TIA)、低髄液圧症候群、パーキンソン病、起立性調節障害(立ちくらみ)、貧血、 不整脈、高血圧、低血圧、糖尿病、更年期障害、自律神経失調、心因性めまい、パニック障害
    などめまいを起こす病気は多数あります。

  • 注意していただきたいこと

    ・めまいで圧倒的に多いのは耳鼻科領域のめまいです。
    ・耳鼻科領域のめまいの典型例は急性期に回転性めまいが起こり時間とともにフワフワするめまいに変わっていくことが多いです。 症状が比較的強いですが、生命に関わることはほぼありません。
    ・めまいの診断に大事なのは、めまい以外にどのような症状があるかという点です。 めまいが起こったときに、まず確認することは、手足がちゃんと動くか、感覚はあるか、目はちゃんと見えるか、などの脳神経の症状を確認し、もしおかしいと思えば脳神経外科の先生の診察も受けてください。
    ・めまいの中で最も怖い病気は脳梗塞、脳出血などの生命に関わる病気です。これらはめまい症状に加えて、脳神経の症状を伴うことが多いと言えます。 めまいに加えて頭痛、複視など視力障害、言葉が出にくい、手足のしびれや麻痺などを合併すれば急いで検査をする必要があります。

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味覚障害

味覚は、甘味、酸味、塩味、苦味、旨味の5つの要素からなります。舌の表面に、味蕾という器官が存在しておりそこでその5つの要素を感知しています。 味蕾は舌の表面、舌の根本、咽頭にも存在していると言われています。

  • 味覚障害の原因

    味覚障害の原因は様々ですが、亜鉛の欠乏によるものが多いと言われています。
    味蕾を再生するのに亜鉛が必要で、不足することにより味蕾が減少するために起こると言われています。
    亜鉛の欠乏は、偏食やダイエットによるものや、薬剤性(薬と亜鉛がくっついて体に吸収されずに排出される)により亜鉛不足が起こります。
    その他の味覚障害の原因として、
    風邪による舌の炎症、鉄欠乏性貧血による舌炎、心因性、糖尿病、肝疾患などなどによっても起こります。

  • 味覚障害の検査

    血液検査
    血中の亜鉛、血清鉄、炎症反応や糖尿の有無をチェックします。

  • 味覚障害の治療

    ・亜鉛の補給
    バランスの取れた食事をとることで亜鉛を十分に摂取します。亜鉛を多く含む食べ物は、海藻類や牡蠣などの海産物、レバーなどです。
    また食事療法とともに、亜鉛製剤の内服を行います。3か月程度の内服を目安に行いますが、治りが悪い場合には4,5か月内服してもらうこともあります。
    ・原疾患の治療
    感冒の治療、貧血があれば鉄剤の内服、そして薬剤性の場合は、可能であれば薬の減量や休薬をしてもらいます。 糖尿病や肝疾患などの全身疾患がある場合は、これらの病気を専門の医師に治療していただきます。

  • 注意していただきたいこと

    ・味覚障害は、早期治療により回復しやすく、半年をすぎると治りにくくなりますので、放置せずに早めにご相談ください。
    ・血中で感知される亜鉛は、体内の総亜鉛量のうちのほんの一部で、亜鉛の値が正常でも、亜鉛不足となっている可能性があり、血液検査が正常でも亜鉛製剤の内服を勧めることがあります。

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風邪(かぜ症候群)上気道炎

いわゆる“風邪”の原因となるものは細菌、ウイルスなど様々ありますが、実は上気道炎の90%以上はウイルス性です。
ウイルス性の風邪で代表的なものは約10種類でライノウイルスやコロナウイルス、消化器症状を伴うエンテロウイルス、 子供の手足口病やヘルパンギーナなどを引き起こすコクサッキーウイルスやエコーウイルス、 クループ症候群の原因として有名なパラインフルエンザウイルス、1歳以下の乳幼児では注意が必要なRSウイルス、 扁桃炎や結膜炎(プール熱)を来たすアデノウイルス、冬になると毎年話題になるインフルエンザウイルスなどです。
ウイルス感染が先行し、遅れて細菌感染が合併する頻度は2%以下と言われているため
大半の風邪は、少なくとも初期は抗生剤が効かないということです。

  • 風邪の症状

    ・症状はのどの痛みや発熱、鼻水、鼻閉、咳、痰などです。
    ・ウイルス感染は3日前後の潜伏期のあと、発症初期の1,2日目は水様性の鼻水や喉のイガイガがあり、 発症して3~5日ぐらいで鼻水、咽頭痛のピークとなり、5日以降で回復に向かい、鼻水も粘調になっていくというのがパターンです。
    ・インフルエンザは潜伏期間も1,2日と早く、発症してから1,2日で高熱が出ます。 アデノウイルスは5日前後高熱が続くこともあります。エンテロウイルスは腹痛、下痢などの消化器症状や来します。
    ・二次的に細菌感染が加わると、黄緑色や膿性の鼻水になっていきます。

  • 風邪の治療

    ・ウイルス感染が多いので、休養、睡眠をとり、栄養をつければ自然治癒が期待できます。
    ・ウイルスの風邪に特効薬はなく、抗生物質はウイルスには効きません。
    (インフルエンザは除きます。抗ウイルス薬というのはインフルエンザ、RSウイルス、ヘルペス、サイトメガロウイルスには存在しますが限られています)
    ・ただし細菌感染による感冒が疑われた場合、幼児や高齢者など免疫が弱い人には予防のため抗生剤を処方することがあります。
    ・症状緩和のためのお薬、いわゆる対処療法が中心になり、痛みや熱が強ければ消炎鎮痛剤、解熱剤を、鼻水がおおければアレルギーなどで使用する抗ヒスタミン剤を、それ以外には去痰剤、鎮咳剤を使用します。

  • 注意してほしいこと

    大半の風邪はウイルスですが、初期から細菌感染を疑われる場合や重篤な症状がある場合があります。 発症初期の1、2日目から鼻水が青っぱな、のどの痛みが強い、あるは高熱がある、また4,5日経っても高熱が持続し、悪化してきている場合は注意が必要です。

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長引く咳

咳は本来、生体の防御機能として必要なシステムです。 気管や肺の末梢の表面には線毛という構造があり、異物を細い気管支から太い気管支へ運び”咳”で体外へ吐き出すことで体を守っています。 つまり咳は必要なものですが、何らかの原因で時として長引いてしまう場合があります。咳の原因は沢山あります。 咳が出る病気で一般的なものはいわゆる風邪ですが、風邪はウイルスによるものが多く、咳は5~7日前後で自然に治ってきます。
咳・痰が1週間以上続く場合には、二次的に細菌感染を起こしたり、アレルギーや、薬の副作用、逆流性食道炎など多岐にわたります。
以下に長引く咳の原因となる病気を上げていきます。

  • ①細菌感染によるもの

    急性咽喉頭炎、急性気管支炎、声門下喉頭炎、急性気管支炎、細気管支炎、肺炎などの細菌感染が長引くものです。 咳症状以外に、発熱、咽頭痛などの先行する症状があります。感染症の治療を行っていきます。

  • ②気管支喘息

    夜寝ている時や朝方起床前に、「ゼーゼー」と音が聞こえて咳がでます。 気道が炎症によりや気管の収縮により狭くなり、空気が通る際に狭い気管支の壁を震わせるために生じているのです。 多くはアレルギーやウイルス感染と関連があり、抗ロイコトリエン剤やステロイドの吸入薬を使用しますが、咳が治まってもある程度の期間使用して、気道の炎症をしっかり押さえる必要があります。

  • ③咳喘息、アトピー咳嗽、喉頭アレルギー

    これらは、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギーの素因がある場合です。 抗ロイコトリエン剤や抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤の投薬、ステロイドの吸入や内服を行います。咳喘息は、長引くと気管が狭くなり、そのまま気管支喘息に移行する場合がありますので注意が必要です。

  • ④副鼻腔気管支症候群

    副鼻腔炎(ちくのう症)と気管支炎(び慢性汎細気管支炎、気管支拡張症)が持続して起こるために咳が出ます。 気管の表面には異物や痰を運ぶ繊毛という毛が存在していますが、その機能が悪いことで起こるとされています。 治療は副鼻腔炎(ちくのう症)の治療、マクロライドという抗生剤の少量長期投与、去痰剤、消炎酵素剤、ネブライザー吸入を行います。

  • ⑤逆流性食道炎

    胸焼けなどの症状が伴い咳が出ます。意外に多いのがこの病気で、喉の違和感の原因としても頻度が多くみられます。 H2ブロッカーやプロトンポンプインヒビター(PPI)などの胃酸分泌を抑える薬を投与します。

  • ⑥特殊な感染症

    マイコプラズマ感染症
    風邪症状による発熱や咽頭痛に加えて、乾いた咳が出ます。風邪症状が治った後も咳が続き、2,3週間かけて徐々に湿った咳に変わっていき、しつこい咳が続きます。 学童期に多くみられますが、近年大人でも増えているようです。 マイコプラズマは細菌とウイルスの中間の性質をもっており一般的な抗生物質(ペニシリン、セフェム系)が効きませんので、マクロライド、テトラサイクリン、ニューキノロンなどの薬を使用します。

    百日咳
    風邪症状にひきつづき1~2週間かけて徐々に咳が強くなります。予防接種を受けていない乳児が重症化する可能性がありますが、幼児の発症は少なく、小児や成人の発症例の報告が増えています。 マクロライド系の抗生剤を中心とした投薬治療を行います。

  • ⑦COPD(慢性気管支炎、肺気腫)

    タバコによる慢性炎症により気管の狭窄や閉塞、あるいは肺胞が破壊されて空洞ができて肺の機能が落ちてきます。 抗コリン剤、ステロイド吸入などを行うことがありますが、あくまでも禁煙が必要です。これらの病気は専門である呼吸器内科の先生の診察を受けていただきます。

  • ⑧肺癌、心因性咳嗽、降圧剤(ACE阻害剤)など

  • 注意していただきたいこと

    咳の原因は多種多様で検査もたくさんあります。 胸部単純X線撮影やCT、副鼻腔単純X線撮影、血液検査、喀痰の細菌検査や細胞診、呼吸機能検査(スパイロメトリー)などです。 最初からそれらの検査をすべて行うことは一般的ではありません。
    上記の病気を想定して、問診、症状の経過を見ながら薬による治療をまず行っていき、改善が見られない、もしくは悪化が見られる場合には、総合病院などで検査を行っていただくことがあります。

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睡眠時無呼吸症候群

ご家族やパートナーの方から、「いびきがうるさい」とか「寝ている時に息がとまっている」といわれたことはありませんか?
いびきは、鼻やのどといった息の通り道が狭くなることで、息を通るときに無理やり狭いところを通るため振動して音がなり、いびきが起こります。
睡眠時無呼吸症候群とは、文字通り寝ているときに息が止まる病気で、この言葉を聞いたことがある方も多いかと思います。実はいびきと密接な関係があり、いびきをしている人の10人に1人は睡眠時無呼吸症候群であるとの報告もあります 睡眠時無呼吸症候群の主な症状として日中に眠気が突然に襲ってくることがありこれが大きな問題となります。
仕事中や電話の途中、あるいは車の運転中に急に突然眠気が襲ってきて、交通事故を繰り返すという事例もあります。
またこの病気に関連する事故は古くから沢山報告されています。
例えば、
・アメリカのスリーマイル島原子力発電所爆発事故(1979年)
・アメリカのスペースシャトル「チャレンジャー」爆発事故(1986年)
・旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所爆発事故(1986年)
国内においては、この病気に関連して、新幹線の居眠り運転という事件もありました。

これらの事故がこの病気に関連すると言われています。

睡眠時無呼吸症候群の患者さんは
・85%は男性
・罹患率は男性の約4%, 女性の約2%
・患者の約三分の二は肥満を合併
・高血圧(2倍の有病率)や心血管疾患(3倍)を合併している
・交通事故を起こす頻度が高い。(7倍)。
など全身の病気、生命に関わる病気を引き起こす可能性が、通常よりも高くなることはこれまでの様々な調査からも明らかになっています。

  • 睡眠時無呼吸症候群の定義

    睡眠時無呼吸症候群とは文字通り寝ている時に息が止まる病気です。
    「無呼吸」は10秒以上の呼吸が停止すること(Apnea Index)で、「低呼吸」は呼吸による換気が10秒以上50%以下に低下すること(Hypopnea Index)です。この二つの回数を合わせた数字、
    無呼吸の回数+低呼吸の回数=無呼吸低呼吸指数(AHI)
     ・睡眠1時間あたり平均5回以上、
     ・7時間の睡眠中に30回以上
    上記のいずれかを満たす場合、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
    一般的には、AHIが1時間に5回以上15回未満は「軽症」、15回以上30回未満は「中等症」、30回以上ある場合は「重症」と見なされます。

  • 症状

    いびき、日中傾眠、夜間中途覚醒(熟睡感の欠如)、性格の変化(抑鬱傾向)、朝起床時の頭痛、集中力・判断力・記憶力の低下、睡眠時の多動、多汗、夜間頻尿、性欲減退など多岐にわたります。 眠気の評価法としてEpworth sleepiness scale (ESS)というものがあります。一度ご自身でチェックしてみてください。 5点以下正常と考えていいですが、10点以上の方は要注意です。

    点数
    0:決して眠くならない,
    1:まれに眠くなる,
    2:時々眠くなる,
    3:つねに眠くなる

  • 睡眠時無呼吸症候群の原因や増悪因子

    無呼吸が起こる原因は、
    ・息の通り道が狭くなっている(閉塞性無呼吸)
    ・呼吸中枢が抑制されている(中枢性無呼吸)
    が挙げられます。
    閉塞性無呼吸の原因
    肥満、飲酒、睡眠誘導剤、加齢、耳鼻咽喉科疾患(アデノイド、扁桃肥大、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など)、小顎症などの骨格、末端肥大症、甲状腺機能低下症など多数挙げられます。
    中枢性無呼吸の原因
    脳血管障害、頸部外傷のほか、慢性の呼吸疾患(COPDなど)による脳の低酸素状態によって起こります。
    睡眠中の酸素不足により心臓血管系循に負担がかかるため、
    不整脈、高血圧、心不全、虚血性心疾患、糖尿病の悪化や突然死の原因にもなります。
    睡眠時無呼吸を改善すれば生活の質が劇的に改善される方も少なくありません。

  • 睡眠時無呼吸症候群の検査

    検査を行うにあたり、睡眠時無呼吸が有るのかどうか?その程度は?全身的な合併症の有無は?責任部位は?治療はどうするか?
    といったことを考えていく必要があります。
    ①問診や身長、体重などの体格、血圧、脈拍数、BMIの計算
    アルコール摂取の有無、睡眠剤内服の有無、内科的な肥満度や高血圧などの循環障害の判定し、基本的な状態を把握します。
    ②口腔内の診察や喉頭ファイバースコープで確認
    耳鼻咽喉科的な検査ではファイバースコープで鼻から気管まで狭窄部位の有無を確認します。
    ・肥満による咽頭の狭窄
    ・上気道の異常の有無
    アデノイド、扁桃肥大 軟口蓋下垂、鼻中隔湾曲症、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎
     喉頭ポリープ、喉頭腫瘍、声帯運動障害
    ・顎・口腔の形態異常:
     小下顎、後退下顎、末端肥大症などによる舌の肥大の有無
    ③睡眠ポリグラフ:Polysomnography (PSG) 
    検査装置で睡眠中の状態を実際に観察します。センサーを鼻やのど、手に装着して寝るだけですので簡単に測定できます。無呼吸の程度とおおよその原因が判ります。
    無呼吸の回数+低呼吸の回数=無呼吸低呼吸指数(AHI)を測定し、重症度の判定を行い、治療を進めていきます。
    ④画像検査(セファロメトリーなど)
    必要に応じて画像検査を行うことがあります。セファロメトリーは顔のX線写真撮影で、骨の形によっていびき、無呼吸が起こりやすいかどうかチェックします。歯科、口腔外科の先生に依頼します。

  • 睡眠時無呼吸症候群の治療

    治療については無呼吸の程度や狭窄部位によって変わってきます。体重減量、薬による治療、鼻マスクによる呼吸の補助、マウスピースなど歯科装具の着用、手術などがあります。
    ①保存的治療
    ・ダイエットによる体重のコントロールを行います。
    ・鼻閉の改善など鼻の通りの改善を図ります。
    アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎があれば治療が必要となります。
    ・睡眠誘導剤、精神安定剤等の呼吸抑制する薬剤の服用を可能なかぎり中止していきます。
    ・禁酒・禁煙を行っていただきます。
    ・睡眠時体位を側臥位、腹臥位で行うなど、体位の工夫を試してみます。
    経鼻的持続陽圧呼吸(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)
    寝るときに機械とマスクをつけて、鼻や口から空気を送り、息の通り道に一定の圧力をかけて広げておく治療です。これにより気道が広がり、特に閉塞性無呼吸を来たしている患者さんの症状が劇的に改善し、現在、睡眠時無呼吸症候群の治療の主流となってます。
    しかしCPAP療法は根治療法ではありません。毎日使用することによって効果を維持することができますが、使用しないときは睡眠時無呼吸症候群のまま状態ですので、この治療をずっと継続していくか、別の原因となる治療(肥満や鼻の状態の改善など)を行う必要があります。
    ③口腔内装具
    下顎プロテーゼ(マウスピース)を作成します。下顎を前方に移動させることで舌が前方に移動し息の通り道が広くなります。肥満が無くて小さな顎の人、軽~中等度の無呼吸のケースで効果が高く、約半数の人が改善を自覚します。しかし口腔乾燥 顎関節の痛み、歯の違和感などを訴えるひともいます。
    ④手術治療
    外科的治療として以前は、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)という手術が積極的にされていました。しかし長期的な成績の有効性は決して好ましくないという報告が相次ぎ、現在はあまり行われなくなりました。
    患者さんの状況に応じて鼻の手術や口蓋扁桃摘出術を行うことがあります。特に小児の場合は、扁桃摘出術・アデノイド手術により90%以上の改善します

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