長引く咳

咳は本来、生体の防御機能として必要なシステムです。 気管や肺の末梢の表面には線毛という構造があり、異物を細い気管支から太い気管支へ運び”咳”で体外へ吐き出すことで体を守っています。 つまり咳は必要なものですが、何らかの原因で時として長引いてしまう場合があります。咳の原因は沢山あります。 咳が出る病気で一般的なものはいわゆる風邪ですが、風邪はウイルスによるものが多く、咳は5~7日前後で自然に治ってきます。
咳・痰が1週間以上続く場合には、二次的に細菌感染を起こしたり、アレルギーや、薬の副作用、逆流性食道炎など多岐にわたります。
以下に長引く咳の原因となる病気を上げていきます。

  • ①細菌感染によるもの

    急性咽喉頭炎、急性気管支炎、声門下喉頭炎、急性気管支炎、細気管支炎、肺炎などの細菌感染が長引くものです。 咳症状以外に、発熱、咽頭痛などの先行する症状があります。感染症の治療を行っていきます。

  • ②気管支喘息

    夜寝ている時や朝方起床前に、「ゼーゼー」と音が聞こえて咳がでます。 気道が炎症によりや気管の収縮により狭くなり、空気が通る際に狭い気管支の壁を震わせるために生じているのです。 多くはアレルギーやウイルス感染と関連があり、抗ロイコトリエン剤やステロイドの吸入薬を使用しますが、咳が治まってもある程度の期間使用して、気道の炎症をしっかり押さえる必要があります。

  • ③咳喘息、アトピー咳嗽、喉頭アレルギー

    これらは、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギーの素因がある場合です。 抗ロイコトリエン剤や抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤の投薬、ステロイドの吸入や内服を行います。咳喘息は、長引くと気管が狭くなり、そのまま気管支喘息に移行する場合がありますので注意が必要です。

  • ④副鼻腔気管支症候群

    副鼻腔炎(ちくのう症)と気管支炎(び慢性汎細気管支炎、気管支拡張症)が持続して起こるために咳が出ます。 気管の表面には異物や痰を運ぶ繊毛という毛が存在していますが、その機能が悪いことで起こるとされています。 治療は副鼻腔炎(ちくのう症)の治療、マクロライドという抗生剤の少量長期投与、去痰剤、消炎酵素剤、ネブライザー吸入を行います。

  • ⑤逆流性食道炎

    胸焼けなどの症状が伴い咳が出ます。意外に多いのがこの病気で、喉の違和感の原因としても頻度が多くみられます。 H2ブロッカーやプロトンポンプインヒビター(PPI)などの胃酸分泌を抑える薬を投与します。

  • ⑥特殊な感染症

    マイコプラズマ感染症
    風邪症状による発熱や咽頭痛に加えて、乾いた咳が出ます。風邪症状が治った後も咳が続き、2,3週間かけて徐々に湿った咳に変わっていき、しつこい咳が続きます。 学童期に多くみられますが、近年大人でも増えているようです。 マイコプラズマは細菌とウイルスの中間の性質をもっており一般的な抗生物質(ペニシリン、セフェム系)が効きませんので、マクロライド、テトラサイクリン、ニューキノロンなどの薬を使用します。

    百日咳
    風邪症状にひきつづき1~2週間かけて徐々に咳が強くなります。予防接種を受けていない乳児が重症化する可能性がありますが、幼児の発症は少なく、小児や成人の発症例の報告が増えています。 マクロライド系の抗生剤を中心とした投薬治療を行います。

  • ⑦COPD(慢性気管支炎、肺気腫)

    タバコによる慢性炎症により気管の狭窄や閉塞、あるいは肺胞が破壊されて空洞ができて肺の機能が落ちてきます。 抗コリン剤、ステロイド吸入などを行うことがありますが、あくまでも禁煙が必要です。これらの病気は専門である呼吸器内科の先生の診察を受けていただきます。

  • ⑧肺癌、心因性咳嗽、降圧剤(ACE阻害剤)など

  • 注意していただきたいこと

    咳の原因は多種多様で検査もたくさんあります。 胸部単純X線撮影やCT、副鼻腔単純X線撮影、血液検査、喀痰の細菌検査や細胞診、呼吸機能検査(スパイロメトリー)などです。 最初からそれらの検査をすべて行うことは一般的ではありません。
    上記の病気を想定して、問診、症状の経過を見ながら薬による治療をまず行っていき、改善が見られない、もしくは悪化が見られる場合には、総合病院などで検査を行っていただくことがあります。

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